俺は星間国家の悪徳領主! コミカライズ版 8巻まで |
奥さんからひどい裏切りを受けた男性がSF風の異世界に貴族の息子リアムとして転生したが、家は貧乏で5歳で家督を譲られ両親から置き去りにされる。彼は世の中に復讐するため、悪徳領主となって民を虐げようとするが、その思いとは裏腹に慕われていく。ギャグSF小説が原作のコミカライズ版。
2025年に原作がアニメ化されたのを見て、1話丸々悲惨な前世の話が描かれ、その後もどこかズレた描写に戸惑った。しかし徐々にギャグがおもしろくなってきて、ついには同時期に放映されていたアニメの中で一番楽しみになった。一方で元同僚から、アニメだとギャグの描写がいまいちで原作小説のほうがよかったと聞いたので、とりあえずコミカライズ版を読んでみた。おもしろかった。
この作品の一番の特徴は、題にあるとおり星間国家を舞台にしていること。領地は惑星丸々一つで、軍隊は宇宙艦隊、ならず者も宇宙海賊となっている。主人公リアムの容姿は、アニメ「反逆のルルーシュ」に出てくる主人公ルルーシュみたいだった。
正ヒロインがAIメイド天城だった。この世界ではAIに人類が滅ぼされかけた歴史があるらしく、その後AIはうまいこと利用できるようになったものの、特に支配者層からは忌み嫌われる存在となっていた。しかし主人公リアムにとってそんなことはどうでもよくて、両親からの最後の贈り物として用意された世話係のAIメイド天城にべったりとなる。
天城は冷静沈着で頭脳明晰な上に、主人であるリアムに対して絶対忠誠を誓っており、リアムのわがままに対してなるべく応えようとする。AIらしく(?)感情を表に出さず無表情なのが逆にかわいい。
序盤は天城に言われるままに教育プログラムを受けたり、悪意のある異世界案内人によって遣わされた安士とかいう怪しい剣術の師匠の言うことに従って修行に専念したりしている。財政も厳しいため切り詰める一方で、軍の払い下げ品の戦艦とか買って、宇宙海賊と戦うようになっていく。
いくつもある帝国国営工場が互いに競争しており、リアムのもとにちょっと残念な女性の技術将校ニアスが自分とこの戦艦を売り込みに来るのがおもしろかった。この女が安士のタイプで、色仕掛けされるリアムに嫉妬して理不尽な修行をさせるのがウケた。その無茶な修行のおかげでリアムがどんどん強くなっていくというギャグマンガ時空だった。
サブヒロインとしてほかに、海賊から助けた亡国の「姫騎士」ティアや、時を超えて体を石化された状態で捕らわれ続けていた太古の女騎士マリー、徒弟を受け入れている貴族のもとで一緒に修行することになる下級貴族の女エイラ、そして名ばかりの呪われた公爵家の令嬢クラウディアが出てくる。そういえば確か前作でも公爵家の女といい関係になってたなあと思った。
ポッと出のキャラとこうまで接近するのかと少しうんざりもしたけど、なんだかんだでこの作者はヒロインの思いを丁寧に描いているので、このキャラも幸せになってほしいなあという気持ちになって楽しんだ。
原作者の三嶋与夢は以前アニメ化もされた「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です」の作者でもあり、なんか登場人物の心情に寄り添った描写がすごくいいと思う。Wikipediaを見たら、実験心理学に関するエッセイ本に影響を受けたとあったので心理描写も計算して描いているのかなと一瞬思ったけど、実験心理学はあまり心の奥底まで確かめるようなものではないのでまた違うのかもしれない。なんにせよ理屈で描いているのかなと思った。
AIメイド天城が自分はAIなのだからと身を引こうとする描写がせつなくてよかった。まあ現実のAIはここまで無表情なわけではないことが分かっちゃったけど、この世界でのAI反乱の歴史によりなんらかの制約が掛かっているのかも。
ハーレムものではあるのだけど男キャラも出てくる。徒弟を受け入れている貴族のところで跡継ぎでない貴族の男と仲良くなり、こいつが領地の問題で困っているので助けに行く展開となる。こいつはこのままリアムの近くにずっといるのかと思ったら、軍の幼年学校には一緒に行かなかったのでしばらくいなくなるようだった。なんかリアムとこの男の仲を下級貴族の女エイラが腐った妄想のネタにしている描写があってちょっと笑った。
帝国の皇位継承権がやたら低い皇子の面倒も見てやる。こいつはナンパばかりするダメ皇子でどうしようもないんだけど、悪いやつではなくてなんだかんだでリアムのいい子分となる。
自分はいまのところ前作「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です」のほうが好きだけど、こっちも十分おもしろくて先が楽しみ。この二作はラブロマンスもありつつのギャグ満載で、同じような趣向の作品としては暁なつめ「この素晴らしい世界に祝福を!」と比肩しうる傑作だと思う。
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