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チョムスキー、民意と人権を語る
二部構成で、前半が岡崎玲子というアメリカ留学経験のある元女子高生のジャーナリスト(?)がチョムスキーのいるMITまで出かけて人権問題についてインタビューした対話録、後半がアメリカによる力の支配と名づけられたチョムスキーの著作の訳となっている。

題名だけ見て買ってしまった私が愚かだった。なにこれ。広い行間、インタビュアーの元女子高生の写真入り。まるで学生相手にやさしく語るチョムスキーの姿勢が痛い。確かに内容は国際問題の入門に適したもので、これを読んで勉強になる学生も少なくなさそうだが、それでも最初から本気のものに触れてほしいと私は思う。この本を読んで国際問題に目覚めてもすぐに興味を失う人のほうが多そうだ。

岡崎玲子という人について私はこれまで一切知らなかったが、アメリカ留学時に自由な校風の学校にいて、9・11当時のアメリカを体験して書いた文章により時代の寵児となったのか、女子高生という身により大人たちからなまあたたかい目で見守られた本人に責任はないのだろうが、こんな本を出版する周りの大人たちの罪は重い。

チョムスキーの主張は相変わらず素晴らしい。しかし翻訳がいまいち。ところどころで立ち止まって読み直さなければならなかった。

酷評ばかりではなく、一点ためになったことを紹介しておこうと思う。本書は人権を題に含んでいる通り、特にアメリカの人権無視の姿勢を批判している。そこで驚かされたのが、刑務所の労働力が大きな産業となろうとしているということだ。

犯罪者の数が増えていること、刑務所を民間企業が運営しはじめていることは知っていたが、政治によりこれが大きな産業となっていたことを本書を読んで初めて知った。恐ろしいことだ。政治が関与すると、好きなだけ犯罪者=格安の労働力が生み出される。最下層階級の人々が犯罪へと駆り立てられ、牢につながれて酷使されるようになるという構造は、現代の奴隷プランテーションだと犯罪学者が二人も言っているらしい。私たちも無縁ではいられない。最低賃金の労働力が生まれるということは、その安すぎる労働力との競争に晒される人々の賃金も下がるということだ。

ついでに先週の週刊文春に載っていた鹿島茂の書評で、ヨーロッパの貧しい移民の過酷な労働について触れられているのだが、店頭価格約一万六千円のジャケット一着をたった240円で縫い合わせる人々がいて、これらの搾取ブランド品を嗜好するのが主に日本人であると言っている。チョムスキーは過酷な労働搾取により数千万人もの死者が出つつあると言っている。戦争のない時代に生まれて良かったと喜んでいる私たちは本当におめでたい。
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