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学校を出よう!3 The Laughing Bootleg
超能力が使える学生ばかりを閉じ込めた全寮制の学校・第三EMP学園で治安を守る一員である黒衣の合理主義少女・光明寺茉衣子が、生徒会からたらいまわしにされてきた謎の生徒失踪事件を解明するために仲間と動くうちに、自分の心の中に引っかかっていたことが晴れる話。

物語は大きく前半と後半に分かれるが、全体的なテーマとして他人から見た自己と自分から見た自己の乖離があり、それに関係するいくつかのテーマが語られる。

前半は失踪事件の真実にたどりつくところまで。解決編の語りがちょっとクドいが、あっと驚く真実だけでなく、それが本作の主人公・光明寺茉衣子の心の中にひっかかっていた問題をも呼び覚ましてしまい、こちらのほうも穏やかに解決してくれる。人間の心理に踏み込んだとても素晴らしい筋書きに感動した。

茉衣子が自分では含意ないあるいは愛想を見せたつもりで行動したことが、実は他人からは怖がられたり不自然に見えたりしているという描写に私はグッときた。

後半はそのハチャメチャ(死語?)な展開でも楽しませてくれるが、と同時にとても文学的で感傷的なテーマが、SFの仕組みを借りてサラリと描かれる。

そしてラスト間際がこれまたよく出来ていて、やはりこれも分類すれば感傷に属することなので微妙と言えば微妙なのだが、とても美しくて印象的なシーンで終えられている。

なんか今回のレビューはストーリーが全然語れていないのだがしょうがない。何か書くとただちにネタバレになる。

ここまで本シリーズを読んできて思ったのは、やたら感傷的な要素が多いことだ。よく言えばとてもよい雰囲気の作品で心も震えるのだが、悪く言えばよく分からない点が多い。構成がいまいちだと言う人もいてそれは分かるのだが、言葉にならない、説明しにくいものを描こうとしている、とここは好意的に楽しんでおこう。

作者がわざと書いていないのか、それとも書かなくても伝わっていると思っているのか知らないが、たとえば本作では宮野の茉衣子への想いが言葉に態度に出ているのが読んでいて分かるが、その事実についてはっきりとナレーションで語られているわけではないため、最近の若いゲーム・マンガ世代の読者に伝わっていないような気がする。

そんな中で本作は、心理学的で文学的な分かりやすい話に仕上がっており、そのうえさらに言葉にならない感傷もたっぷりで、なおかつ主人公の気落ちが魅力的で、前二作と比べると完成度が高いと思う。

光明寺茉衣子が本作ではヒロインとして扱われていて、このキャラクターの魅力を存分に楽しんだ。どうでもいいことだが、こんなに論理的な女性は現実にはほとんどいない。あるいは彼女は論理的に非論理的なのかもしれない。なに言ってるんだ。

ただ、今回初めて出てきた滋と類の人物造形がいまいち弱い。特に滋は失敗気味だ。キャラが立っていないし、役回りも不十分で、もうちょっと個性があってほしいなと思った。

にしても、涼宮ハルヒのシリーズで通算400万部も売り上げたのと同じ作者の並行刊行された本シリーズが、何件か周った本屋でなかなか見つからないのはどういうことなのだろう。次の四作目を探してみたが近場では売っていなかった。5巻と6巻なら手に入ったのでそっちから読むべきかどうするか。
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