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宇宙探査機 迷惑一番
地球連邦軍の月面基地に所属する<雷獣>戦闘ロボット小隊の五人は、哨戒任務中に謎の飛行物体に遭遇する。そいつを詳しく調べようとした途端、彼らは平行世界に飛ばされてしまう。元の世界とほとんど同じなのに微妙に異なる世界に惑わされ、隊員たちは悩んだり苦しんだりしながら、元の世界に戻るために動き始める。

冒頭いきなり謎の対話から入る。話の内容が意味不明で、誰と誰が対話しているのか分からず、コミカルで少し面白いのだけど読むのが大変そうだなあと少々ウンザリした。

そのうちすぐに五人の若い軍人たちの話に切り替わる。どうやら彼らは冒頭の謎の対話の主を発見して追跡する立場らしいことが分かる。主人公は一番操縦のうまい若手パイロットで、隊長が年配の少佐、それに恋人同士の男女二人組と、最年少のちょっと頼りない感じの青年。彼らのやりとりで話が進んでいく。

彼らに待ち受ける運命というのは、実は怪しい哲理学者・和泉禅禄の研究成果がもたらしたもので、そのせいで彼らは不思議な出来事に巻き込まれる。それが平行世界とか「迷惑一番」という名の「宇宙探査機」によるものだ。作品全体を通じてこのわけの分からないものに振り回される。

要はこの作品は、不可思議な現象と五人のやりとりを楽しむSFキャラクター小説なのだろう。SF的な要素としてもキャラクターものとしても私はあんまり楽しめなかった。どういう仕組みになっているのかを解き明かしていくミステリーっぽい要素もなくはないが、結局のところSFなので煙に巻かれて終わってしまう。SF好きな人にとってはこれで満足なのかもしれないなとは思うが、正直読んでいて中途半端にしか思えなかった。ロボットのディテールなんかも面白いことは面白いがほんとうにそれだけって感じ。

平行世界に放り込まれた主人公がこんな思索をする。

*

これほど奇妙ではないノーマルな世界にしても、世界というのは多かれ少なかれ歪んでいるものだ。独りではわからない。人との関係で、わかる。わからないままだと自分が歪まされて、おかしくなる……虚無感のうちに自己が希薄になって消滅するのだ。

*

この204ページ付近の独白は一昔前に流行った共同幻想っぽい。しかし特にこれ以上深められるわけではない。それにベースがSFなので、基本なんでもアリの中で、現実認識がどうこうという話をしても効果が薄いんじゃないだろうか。

それだったらこの「偽りかもしれない現実」に対してとことん戦ったり葛藤したりする描写をするべきだと思うのだが、主人公たち五人は「能天気」という設定になっていて逃げている。うーん。結局戦闘で盛り上げて結末をつけている。

もっとテーマを追求するか、キャラクターの魅力があるかすれば、魅力的な作品になったと思う。
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