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弁護士のくず

TBS (原作:井浦秀夫)

傑作(30点)
2007年5月23日
ひっちぃ

一見俗っぽくてスケベで適当に仕事をしているかに見える中年弁護士・九頭(くず)の下について一緒に仕事をすることになった新人弁護士・武田真実が、九頭のいい加減さにあきれながら事件に関わっていくうちに物事の真実にたどり着いていく話。

原作マンガがあるらしい。私は読んでないのでよく分からない。

まずプロットがいい。毎回なんらかのひねりがあって飽きさせない。弁護士を主人公にしているので、冤罪を晴らすという構図はごく当たり前のものなのだが、被疑者との信頼関係がない状態から話が始まったり、途中までずっと間違った方向で事件を考えていたのが九頭の洞察力で180度逆転したりと、見ごたえのある展開が良かった。

九頭を豊川悦司がやっているのだが、天然パーマに頬を赤く塗ってほんとにただのスケベオヤジみたいな感じでいつもおちゃらけている。私はテレビドラマにあまり興味がないので豊川悦司のこれまでの出演作は思い出せないから比較できないのだが、今回の九頭はとても魅力的なキャラクタを演じていたと思う。

同様に伊藤英明が演じる武田真実も良かった。二枚目俳優とされる人が、新人のなさけない弁護士をきっちりと演じている。こういうのってジャニーズの即席俳優には無理だろうなぁ。

この二人だけでなく周囲の役者陣が充実していたからこそ、よく出来た脚本が活き活きとドラマを脈打たせているのだろう。ギャグの多い掛け合いもシリアスなシーンもまとまりよく一体化してドラマを作り上げている。ゲスト俳優も毎回個性的で良かった。特に杉本彩。誰とは言わないが、実力が今一歩な役者が混じっても、周囲のスタッフや役者が盛り立ててちゃんと普通に見れるようにしている。この作品は色んなことがうまくまわったんだろうなと思った。

hitomiの主題歌も気に入った。私はhitomiのアルバムも一枚持っているのだが、いままで相性はあんまり良くなかった。でもいくつかのシングルは好きだ。このGO MY WAYはイントロの期待感といいサビの盛り上がりといいとてもよかった。

ただ、いくつかの回で展開がいまいちだと感じたことがあった。例えば、九頭の子供と名乗ってやってくる美月(みづき)の回はどうも不自然に思えてならなかった。しかし以降の話でレギュラーになるとこの少女の大人びて九頭をひっぱっていくところはとても魅力的でこの作品を引き立てている。ほかにも無理に話をひっくり返そうとして最初の描写が不自然になっていると感じられたことが何回かあった。

法廷シーンが長すぎもせず程よい長さで、何もかもがうまくいくわけではなくちょっと失敗したりするところとか、よく出来ているなと思った。多分他にも私の気づいていないところで良いところがいくつもあるだろう。弁護士事務所の古い建物の屋上に植物が植えられていていい雰囲気が出来ていたりとか。映像作品というのは色んな分野で色んな仕事をしている人がいて、それがうまく回ると映像や音響の隅々まで魅力を感じるものだ。

こういう良質なテレビドラマはどんどん続けてほしい。原作を離れると途端に魅力がなくなるテレビドラマが多く、この作品でも唯一原作のない回には不安を覚えたが、別の原作と組み合わせたりとかいい脚本家を探してくるとかすればいいと思う。

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