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日本語と韓国語

大野敏明

傑作(30点)
2002年5月1日
ひっちぃ

要するに日本語と韓国語は非常によく似ているという話である。言語の類似性のほかに、日本と韓国の相互作用について色々と面白いことが語られている。

作者は産経新聞の編集委員で、書き下ろし以外は産経新聞での連載を収録したものらしい。文春新書。

韓国は日本に併合されたことがあるので、そのときに数千語の日本語が韓国に韓国語として残った。ウドン、ヤキトリ、ホタテ、オデン、モリソバ、などなど。ヤキトリはなぜか串焼きという意味でも使われるらしい。ほかに、読みは異なるが、日本語の漢字表記をそのまま韓国語読みしたものが韓国語として定着したものも多い。

一方で韓国語から日本語になったものもある。なかでも、自転車の俗語であるチャリンコが韓国から来た言葉だというのは驚きである。

全然意味の異なる言葉も意外に多い。その代表格が「手紙」で、韓国ではトイレットペーパーになってしまう。韓国では手紙のことを「便紙」と言うらしいが、逆にこっちは日本ではトイレットペーパーっぽい。

韓国語の文法は日本語と非常によく似ている。語順はほぼ日本語と同じ。さらに、助詞までそっくりである。「私が日本人です」と「私は日本人です」の微妙なニュアンスもそのままで、さらに「に」と「は」を足して「には」とするのもまったく同じだそうである。それから「…です」と「…ニダ」は同じ意味で、2ch のハングル板で韓国をからかう人々が使っている。

韓国と朝鮮の呼び名の違いについて、歴史背景からなにから丁寧に説明している。そもそも歴史上、韓も朝鮮も実在したが、朝鮮という言葉は日本の統治時代によく使われたので差別語となっているらしい。ところがそれは韓国だけの話で、北朝鮮の人々は自分たちのことを朝鮮人と言っている。日本が日清戦争で勝利を納めると、朝鮮がなくなって大韓帝国ができるが、併合前に日本がこの帝国とつく対等の名前を嫌がって朝鮮に戻したらしい。その他、いろいろややこしい。

また、韓国人の持つ日本への感情も色々あって面白い。豊臣秀吉が嫌われてるのは有名みたいだが、その秀吉を倒して二百年の平和の礎を築いた徳川家康になぜか韓国人は好意的らしい。その徳川を倒した明治政府を今度は逆に嫌ったというから複雑である。

秀吉の朝鮮出兵のときに大活躍した加藤とか黒田とかの名字はいまだに嫌われていて、ドラマに出てくる悪役の日本人の名前にまで使われているというから面白い。名前といえば、飯沼さんの名前は韓国では「この野郎!」とまったく同じ発音なので注意、だとか、ほかにいくつか注意すべき名前が挙げられている。

韓国では名字が父親から引き継がれるので、日本の男性が韓国人と結婚して現地に定住すると、なんと日本の名字が韓国でも残っていくらしい。そんなわけで韓国人の名字はどんどん増えてらしい。ただし、韓国人の半分以上は主要な数種類の名字で、全部あわせても三百数種類しかないらしい。逆に日本は世界でもっとも名字の多い国みたいで、ある調査によれば 27万種類以上もあるらしい。

その他、韓国のことわざで日本や中国とそっくり、または微妙に違ったり、韓国ならではの言葉やことわざなど、面白いところはもっとあるのだが、これ以上紹介しているときりがないのでこのへんにしておく。

韓国語は、ハングルのあの気味の悪さ(失礼)によって日本でのイメージがあまりよくないと思うのだが、一度知ってみるとあまりに近く感じて非常に面白い。本書の難点を言えば、私がインターネット上で前に見たことのある、ハングル文字の成り立ちの表、あれをぜひ掲載しておいてほしかった。あれは一種のローマ字みたいなものなので、子供たちのあいだで暗号みたいに広がることも期待できるのではないだろうか。

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