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NHKスペシャル 日本海軍 400時間の証言 第1回 開戦 海軍あって国家なし

NHK 2009.9.8 0:09〜

傑作(30点)
2009年9月9日
ひっちぃ

旧日本海軍の幹部たちが仲間内で反省会を行っていて、最近になってその模様を録音したテープが出てきた。三回に分けてその中から抜粋した第一回。皇族の軍令部総長が昭和に入ってからの海軍の大軍備を後押ししたこと、陸軍からの開戦の圧力に抗し切れなかったこと、予算獲得のためであったことなどが赤裸々に語られる。

旧日本陸軍は食料もろくに持たないまま無茶な行軍をしたりしたので、体育会系のようなイジメ体質もあって戦後になってボロクソに言われたのだが、旧日本海軍は陸軍と違って少数精鋭で軍艦という近代兵器と共に戦ったためか、やたらと称える人が多い。戦車兵として従軍した司馬遼太郎は陸軍をけなしたし、中曽根元首相や阿川弘之なんかは海軍を美化して語っているようだ。

だから日本海軍をめぐる話は眉につばをつけて聞いたほうが良いというのが今の私の見方なので、今回の特に身内だけの反省会というのはだいぶ割り引いて受け取らないといけないと思ってこの番組を見た。

400時間もあるテープの中からどれを取り上げるのかはNHK次第なのだけど、なかなか興味深いところを拾ってきてくれたなあと思った。

まず、海軍を構成する三つの組織、海軍省、艦隊、軍令部の中で、天皇直属という特権的な位置づけで他からの干渉を排して強力な権限を持っていた軍令部のトップに、昭和になってからも皇族が就いていた。この人が大軍備を煽ったのだそうだ。これも海軍の責任転嫁だとも取れるが、皇族相手にやりにくかったのだろうとは思う。

次に一見突拍子もない意見として、陸軍からの圧力に海軍は抗しきれずに開戦に傾いたのだということ。正直そんな馬鹿なと思わなくもないが、もしクーデターが起きたとしたら、海軍は人数が少ないから陸軍に勝てないということを言っていた。軍艦だけでは内地の戦いにはあまり役に立たないし、海軍の陸戦隊だけではまともな戦いにならないだろう。

でもそもそも陸軍が同じ日本の軍隊である海軍に対して武力を行使するなんてことがあると考えること自体がおかしいと思うだろう。その理屈はこうだ。当時陸軍は既に中国との戦争に入っていて多くの損害を出していた。戦争を避けるにはアメリカの要求を呑むしかなく、そうすると何の成果も挙げられないまま中国から引き上げなければならない。それは陸軍としても国民としても納得できないだろうと。そんな背信的な海軍だったら武力をもってしてでも言うことを聞かせなければならないという結論になってもそんなに不思議ではないように思った。現に日露戦争で戦いに勝っていたのに戦果に乏しかったことで国民があちこちで暴動を起こした事実がある。

最後にやはり予算の問題があったということ。アメリカを敵とすることで海軍の予算は倍になったらしい。もちろん海軍は互いに生存を掛けてアメリカと全面戦争するつもりはなく、小競り合い程度のことと考えていたらしい。

いまの私たちが先の大戦を振り返ると、戦争というのはどちらかが潰れるまで戦いが収まらないのが当然だと考えがちだが、歴史的に見ると劣勢になっても不利な条件を飲んで講和するほうが普通だった。まさか市民を数十万人単位で虐殺されて占領され、天皇制という日本の国体をはじめとした政治の仕組みまで脅かされて一部改変させられるだけでなく、国民の思想信条まで圧迫されて洗脳まがいの教育まで受けさせられることなんて、当時のまともな軍人や政治家の誰に予想できただろうか。あれから六十年以上経つのに、日本には未だにアメリカ軍の基地があり、アメリカが日本を守ってくれているのだと日本人は信じさせられている。北朝鮮みたいな小国が日本に向けて核ミサイルを撃ってくるなどという妄想を植えつけられている。

と語りすぎてしまったので番組の話に戻る。

比較的どうでもいいことなのかもしれないけど、アナウンサーがなかなかすごいと思った。小貫武っていう人なのか。まったく笑みを見せず真剣な表情を固定させ、淡々としゃべっている。内容も良かった。日本の旧軍の官僚体質は今でも官庁に受け継がれていることに触れている。そしてそれは日本人全体の問題でもあるとも言っている。ちょっと表現が控えめすぎるようにも思ったけど。

(最終更新日: 2010年1月3日 by ひっちぃ)

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