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天才柳沢教授の生活 一巻

山下和美 (講談社文庫)

いまいち(-10点)
2002年11月25日
ひっちぃ

生真面目な経済学部教授・柳沢良則(68)が主人公の人情ドラマ。最近テレビドラマ化されたがこれはその原作。

険しい初老の男が描かれていた表紙を書店で見て気にはなっていたのだが、手を出さずにいるうちにドラマのほうを先に見てしまった。主演は松本幸四郎。ドラマを先に見ることになったので違和感はなかったが、原作のマンガを見てみるとちょっとイメージが異なる。まあ演技がうまいので、あのすっとぼけた感じがよく出ていて、非常にいいと思う。

そんなわけで、ドラマよりも原作マンガの方が絶対面白いはずだと思って買って読んでみたのだが、この原作マンガはあまり完成度が高くない。文庫本一巻に20話ちょいが詰め込まれている。

主人公の教授のキャラクターが光っているだけで、あとは安っぽい人情モノなのだ。私の感性の方がおかしいのかもしれないが、あまりに単純で面白くない。人物もステレオタイプで薄っぺら。

この作品は週刊モーニングに連載されていたみたいなのだが、傾向としては少女マンガによく見られるタイプだ。比較的少ないページで感動的な話を成立させる趣向だ。良質の少女マンガだと、単行本一冊読むのにも疲れるほど充実感がある。ところがこの作品は私は読み流しモードに入ってしまった。マイナーな少女マンガ雑誌に掲載される一部の人しか知らないような作品と似てる。

これは完全にテレビドラマの勝ち。原作マンガとテレビドラマとで同じ巻を二つ三つ見比べてみたが、テレビドラマの方が脚本がよく練られている。

ただし、原作者・山下和美の着想の良さは素晴らしい。これだけ強烈な主人公を生み出し、この主人公をめぐる話をうまいこと作り出している。並の作家では思いつかないだろう。この原作がなければ、テレビドラマとしてここまで膨らませることができなかったに違いない。

特に、柳沢教授に四十年前家庭教師として教えを受けて教授に恋心まで抱いていた女性が、現代になって痴呆症になって教授の家に押しかけて繰り広げる騒動は、原作者と脚本家のこれ以上ない共同作業だったと思う。この老女を演じた女優もとても素晴らしかった。

テレビドラマを見て原作を読みたくなったという人には、私からは原作を勧められない。テレビドラマだけ見ているだけでいいと思う。それとも二巻以降で化けるのだろうか。

[参考]
http://www.kodansha.co.jp/

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