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日本国債は危なくない

久保田博幸 (文春新書)

いまいち(-10点)
2003年1月22日
ひっちぃ

幸田真音の小説「日本国債」の主な取材元となった国債ディーラーが書いた国債解説本。内容は主に二つで、国債の金融商品としての性質と状況を説明し、いままでに発行されてきた国債の歴史をひもといている。

前半の国債の金融商品としての側面についての解説は、これまで私はあまりよく分かっていなかったので新鮮だった。国は十年国債なら十年後にしか償還してくれないが、市場が存在するので好きな時に売ることができる。流通性が高いので、ずっと金庫にしまっておくといったイメージからは程遠い。

なかでも利率と価格についての具体的な説明がとても分かりやすかった。たとえば百万円で 2%の利率の十年物を買ったとする。ところがすぐに金利が 3% に上がってしまうと、この国債の利率は水準より低めになってしまう。そこで、こういうときは実質的な利率が 3% になるまで流通価格が下がるのだ。九十万まで下がると、十年間の利息20万円+償還益10万円で、実質的な利率がちょうど 3% になる。

後半は、戦前に乱発しすぎた国債発行を反省し、戦後になってから計画的に発行されだしてから今の赤字国債連発に至るまでの歴史を書いている。こちらも興味深い。

比較的良心的な本だとは思うが、私からすればまだまだ疑問が残る。私に言わせれば、国債なんていうものは税金と正反対の性質を持った強者を利する仕組みだ。特に財政赤字を建て直すために消費税を増税する雰囲気が作られつつあるいまを見れば、所得税や相続税が減税され資金に余裕のある富者を富ませることにしかならないだろう。

国債を買っているのは主に郵貯や保険や銀行や証券会社などだ。私たちが預けた金が、国債で運用されるのだから、私たちにも確かに還元されている。しかし、コストとして中間マージンを取られ、銀行の普通預金の利率は限りなく 0に近い。公務員は安定しているし、金融マンは高給取りだ。個人向け国債といっても窓口を仕切るのは彼らだし、そんなものを買う個人というのも一部の富者だけだし、買ったところで自分の尻尾に噛みつくようなものだ。

国債に限らず、いまの日本は、国にたかって自分を利する輩が多すぎる。公益法人もそうだし、土建屋もそうだし、各種補助金もそうだ。日本がアジア各国に謝罪するのだって、国に ODA 資金を出させるための口実に過ぎない。政治家はそうやって自分のファミリー企業に儲けさせる。そのうち財政危機を喧伝し始め、消費税で国民全員から金を巻き上げようとする。いまの流れが続くようだと、日本は永遠に不況から脱することができないだろう。

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