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Android-x86

黄志偉, Google, Linus Torvalds, Open Source Communities

傑作(30点)
2016年1月24日
ひっちぃ

Linuxベースのスマートフォン・タブレット用OSのAndroidを普通のパソコン用に移植したもの。AndroidのソフトをPCで動かすことが出来る。エミュレータではなく実機で動くため、一昔前の低スペックなマシンでも動かせるほか、グラフィックスが高速で動作が機敏。

スマートフォンやタブレットが広まってきて、WindowsやOS XやUbuntuなどよりもiOSやAndroidのほうが便利な場合も出てきているのだけど、バッテリーを気にしなければならなかったり、画面が小さかったりするので、パソコンで動かせないものかと思っていた。まず試したのはエミュレータで、Android SDKに付属のものが意外とよく動いてくれたのだけど、いまいち動作が不安定だし操作感も悪かったので、実機にインストールできないものかと探してみたらこのAndroid-x86に行き着いた。

結論から言うと、アクションゲームがかなり快適に動く。いまコマーシャルでよくやっているコロプラ「白猫プロジェクト」がグリグリ動く。それもそのはず、パソコン用のCPUはスマートフォンやタブレットのそれと比べて圧倒的に速く、三年前のメインストリーム最速CPUのCore i7 3770Kで動かしてもスマートフォン最速クラスのSamsung Galaxy S6の倍ぐらい速い。メモリも8GB認識している(5.1.1の64bit版で)。

スマートフォンやタブレットとPCとの最大の違いはタッチパネルの有無なのだけど、最近はWindows 8のおかげでPCでもタッチパネルディスプレイが使える。自分は持っていなかったのだけど、このためにわざわざDELLのP2314TとGeChicのOn-Lap 1303Iを買った。使えるかどうか確認せずに買ったので心配だったけれど、割とあっけなく認識された。タッチパネルがあるともうほとんどタブレットと変わりなく使える。タッチだけでなくフリックも違和感ない。もちろんマウスやキーボードも使える。

Google Playも最初っから入っているので、ストアから好きなアプリをダウンロードしてきて使える。あまり色々試していないのだけど、前述のコロプラ「白猫プロジェクト」や2ちゃんねるの専用ブラウザ「2chMate」なんかは普通に使えた。Google製のアプリのたとえばgmailやGoogle Mapなんかも余裕で使える。

ただしPCなのでスマートフォンやタブレットでは当たり前の各種センサーが使えない。GPSや重力センサーなど。だから画面の向きを変えたりするといった当たり前の操作ができない。ソフトによっては勝手に画面の向きを変えるものもあるので、画面の向きを固定するソフトをあらかじめ入れておいたり、画面の向きにあわせてモニタを回転させたりする必要がある。自分はコロプラ「白猫プロジェクト」のためにディスプレイアームを使ってモニタ自体を回転させて縦にして使っている。

パソコンを複数使っている人あるあるとして、マウスやキーボードが机にあふれてしまうというのがある。切り替え器を使えばいいんだけど、二つ以上のことを同時にやっていると画面や入力機器も複数あったほうが都合がいいので、予備機ぐらいにしか切り替え器は使わない。その点、タッチパネルだとマウスやキーボードが必要ないので省スペースでいい。

とまあいいことづくめなのだけど、問題は使い始めるまでの敷居の高さにある。

インストーラが不完全なのか不親切なだけなのか、最初インストールしたときはブートしなかった。Linux用のブートローダgrubを使うのだけど、grub用の設定ファイルを見失っていた。少し調べたけれど原因がよく分からず、設定ファイルをそれらしいパスにコピーしてみたけれど無駄だったので、いったんあきらめてLinuxのディストリビューションであるUbuntuを入れてみて、そのあとで改めてAndroid-x86を上書きしてみたらうまく立ち上がってくれた。ちなみにAndroidは一時期流行った1FD Linuxのようにファイルシステムをイメージファイルで持っているので、インストールといってもディスク上にファイルシステムが展開されるわけではなく、ただイメージファイルを書き込んでいるだけ。

インストール時にパーティションを切るのだけど、GPTディスクかそうでないかによって使うツールが分かれていたり、ファイルシステムを選ぶときに選択によって何やら制限があったりするみたいなので、一昔前のLinuxをインストールできる程度の知識が要る。あまり知らない人は、いったんUbuntuを入れたあとでUbuntuを入れたパーティションをそのまま選んで上書きするのが簡単だと思う。できれば、Ubuntuを入れるときにあらかじめAndroid-x86用のパーティションも切っておくと、Ubuntuを残したままAndroid-x86を入れられるのでいいと思う。そのときはgrubの設定も考慮する必要があるけれど。

インストールがうまくいったと思ってもうまく立ち上がらないことがあるので、debug modeを選んで立ち上げて原因を探りながらやる必要があるかもしれない。まあ大抵の場合、ハードウェアが対応していないか、最初の起動に時間がかかっているのか、インストールに失敗しているかなので、debug modeにしたところで何か問題解決できるとは思わないほうがいいと思う。原因が分かったところで、Linuxのことをある程度知っている人でないと解決できないだろうから。なにかデバイスが認識できていないことが分かったら、きっぱりとあきらめて他のマシンで試したほうがいいと思う。

対応ハードウェアなのだけど、自分はまず古い3年前ぐらいのASUS P8Z77I-DELUXEとCore i7 3770KにAndroid-x86 4.4.4 r3で試してみたら、ネットワークは有線無線ともに認識されたし、スリープも問題なくできた。Wacomのペンタブレットも使えた。一方で、最初DELL P2314Tというタッチパネル付液晶モニタのタッチパネルが認識されなかった。接続するUSBのポートを変えてみたらあっさり動いた。USB 3.0のポートだとダメみたいだった。VGAは内蔵のIntel HD Graphics 4600がそのまま動いた。

次に最新世代のAsrock H170M PRO4とCore i3 6100に入れてみたら失敗した。ACPIのエラーが出まくってにっちもさっちもいかなかった。調べてみたら、最新のskylakeプラットフォームではLinuxだと電源管理がうまくいかないらしい。最新カーネルの4系を使ったAndroid-x86の5.1.1や6.0でもダメだった。最新のUbuntuでもdmesg見るとエラーがでまくっているのでしょうがない。本日出たばかりの4.4.4 r4でも同じだった。6.0だとなぜかLiveでは動いたのだけど、有線ネットワークのIntel i219Vが認識されなかった。

次にASUS H87I-PLUSとCore i5 4570でやってみたら、よくわからないけれど4.4.4 r3だと有線ネットワークを認識しなかったので5.1.1で試してみたらうまくいった。Intel i217がダメなのは意外だったけれど、Intelなのは物理層だけらしいので論理層がダメだったのかもしれない。逆にRealtekのほうが数が出ているせいか普通に認識される。VGAはAMD Radeon 5870で問題なく動いている。

ほかにMSI E350IA-E45というAMDの一体型省電力E-350のマシンでもうまく動いた。ただしゲームは重かった。また、GIGABYTE P55A-UD6とCore i7 860で少しだけ試してみたけれど、こっちはうまく動かなかった。Liveだと動いたのでインストールに失敗しただけかもしれない。

というわけで誰にでも手軽に出来るわけではないのが難点なのだけど、OS Xの夢を見るよりは敷居が低いと思う。インストールディスクを作るのだってイメージをダウンロードしてCD-RやUSBメモリに書き込むだけだし。

マウスも使えると書いたけれど、ソフトによっては使えないので注意。コロプラ「白猫プロジェクト」はタッチ専用なのでマウスは反応しない。でもWacomのペンタブレットは使えた。他のソフトもマウスで十分だけど、タッチパネルで使うほうが便利なのでぜひ検討してほしい。

家にほどよい型落ちのマシンがあるなら試してみるといいと思う。ただ、書いたとおり最新のskylakeプラットフォームではまだ動かないと思うので注意。Haswell世代なら大丈夫だけど、5.1.1はまだrc1なので、安定板の4.4.4 r3やr4を使いたければ、さらに古いSandy/Ivy bridge世代がいいと思う。あ、r4からカーネルのバージョンが4系になったらしいからHaswellでも普通に動くかも。

[参考]
http://www.android-x86.org/

(最終更新日: 2017年5月3日 by ひっちぃ)

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