評 review の RSS
評 review の静的版 とその ziptar.gz
表 top
評 reviews
称 about us
・ 全カテゴリ
  ・ マンガ
    ・ 日常もの

New Game! ニューゲーム

得能正太郎 (芳文社 マンガタイムキララコミックス)

傑作(30点)
2018年12月9日
ひっちぃ

美術学校を卒業した涼風青葉は、念願のゲーム会社に就職した。そこでは、大好きなゲームをデザインしたあこがれの先輩がパンツ丸出しで床に寝ていたり、人見知りなのにチャットだとやたら饒舌な人がいたりした。変わった先輩たちに囲まれながら、青葉は一つ一つ仕事を覚えていく。萌え系4コママンガ。

アニメの方を見て、女の子たちがかわいい上にストーリーも面白かったので、この原作マンガにも手を出してみた。とても良かった。芳文社のまんがタイムきらら系の萌え4コママンガは、自分にとってはキャラが萌え風ってだけでキャラもストーリーもいまいちに思えるような作品が多いのだけど、この作品はどっちも素晴らしいと思った。

まず、高卒で童顔でがんばりやの涼風青葉が、社会人一年生として会社の決まりや仕事の進め方について戸惑いながらも覚えていくのがかわいくて楽しい。美術学校を卒業したばかりでいままで二次元の絵しか描いたことのなかった彼女が、下積みとしてまず3Dのモデリングを覚えていく。最初はなんてことのない村人を作るところから始める。大の字のポーズで人物を作っていくところが、ゲームを作っていた知人のやっていたことまんまだったので懐かしくなった。このあとボーン(関節)を作ってポーズがとれるようにしていくんだろうけど、さすがに細かすぎるところは程よくカットしている。作者はゲーム会社に3年ほど勤めたことのある人とのこと。

比較的どうでもいいことだけど、作者のTwitterを最近なにげなくフォローして見ていると、海外のゲームを割とやり込んでいることが分かって(一巻のあとがきにもそう書いてある)、ゲームが好きな人なんだなあと思った。きらら系のスマホゲームにガチの感想を書いてるし。

滝本ひふみは普段無口なのだけど、青葉がチャットで呼びかけるとノリノリで返してくれる。彼女は人見知りを治したいと思い、青葉に対しても先輩として色々してあげたいと思うのだけど、なかなかうまくいかないのだった。一方でコスプレ趣味があり、そのときはしっかり演じているせいか尻込みしないでいられるけれど、あとで素に戻った時にもだえる。

篠田はじめはボーイッシュで快活な女の子で、会社には自転車で来ている。スターウォーズのビームサーベルとか好きで自分の席に色々と置いている。ほかに戦隊モノとかが大好きで、公演の予約を取るために奮闘したり、戦隊モノっぽいゲームの企画を出して新しい境地を開こうとしたりする。

飯島ゆんは関西人の気さくな女の子なのだけど、元々は地味な性格をしていた。家族思いだったり体重を気にしていたりする。ここまでの三人は年の近い先輩で、青葉にとってはなんでも気軽に相談できる相手で、同じチームということでよく行動を共にしている。

ちょっと上の立場として、青葉が最も尊敬するキャラクターデザイナーの八神コウと、彼女に公私にわたって寄り添っているアートディレクターの遠山りん、その上にわがままなプロデューサーの葉月しずくといったように、色んな立場の人々が青葉の周りにいて絡んでくる。あと二年目に入る前に後輩二人が入ってくる。

青葉の親友として、普通の大学に進学した桜ねねはテストプレイのアルバイトで青葉の会社に働きにいき、そこでプログラミングに興味を持って独学しはじめるがなかなかうまくいかない。そんな彼女のバイトでの天敵だった阿波根うみこは、口が悪いながらもやさしくフォローする。芸大に進学した天才肌の星川ほたるは、青葉たちとは別の道を歩みながらものちにクロスオーバーしていく。

最初に書いたとおり、この作品のキャラクターデザインは本当に素晴らしいと思う。自分はアニメから入ったのだけど、まずアニメのクオリティが最高だった。絵づらが美しいだけでなく線やデザインが完成されており、絵を見ているだけでうっとりした。そのうえ、もちろん性格描写も良くて声優さんの声や演技も素晴らしかった。円盤(DVDやBlu-ray)が欲しくなった。絵はアニメの原作であるこのマンガの時点で95%ぐらい完成していると思う。

次にちゃんと仕事モノになっているのが良かった。青葉は社内コンペを戦ったり商売の論理に屈しそうになったりして時々落ち込んだりもしながら前向きにがんばっていく。アニメ「SHIROBAKO」ほどではなかったし、そこまで共感できたわけでもないのだけど、お花畑みたいな楽しい世界だけを描いていないところが良かった。まあ娯楽作品なんだしかわいい女の子たちを描いているわけだから、ただただ楽しいところだけ扱うほうが正しい(?)のかもしれないけれど、ちょっぴり加えられた苦味が登場人物をより魅力的にしていると思う。

自分は登場人物の中では特にねねっちこと桜ねねが好き。典型的な末っ子キャラだと思うんだけど、いっぱいいっぱいになってがんばったり、時にどうしようもない失敗をしたり、それをごまかそうとしたり、それがバレて大目玉を食らったりと、とにかく見ていて飽きない。作者のTwitterのアイコンがいまねねっちになっていることだし、作者のお気に入りのキャラまたは読者人気が一番あるキャラなのだと思う。

主人公の青葉が単なるがんばりやじゃなくて、ちょっとお調子者なところがあったり、言われたことをそのまま受け止めるだけじゃなくて疑問をぶつけて見せたり、基本的には控えめだけど野心を見せたりと、いきいきしている。そのせいなのか、人見知りの滝本ひふみから青葉は小悪魔キャラなんじゃないかと妄想されていてこの作品の中で一番ウケた。

ちょっとピンとこなかった点として、青葉のあこがれの先輩である八神コウが自分の可能性を求めて行動するところとか、彼女のことが大好きだけど親友として一線を越えずに振る舞っている百合キャラの遠山りんの煩悶なんかが、自分としてはちょっとよくわからなかった。あと、青葉の親友の星川ほたるの存在自体が正直いるんだろうかと思った。

話の展開としては正直それほど面白くはないと思う。あんまり先が気にならないし。ただ、話によって登場人物の魅力が引き立てられているので、キャラと一緒に噛みしめて味が出てくる感じ。そうそう、みんな表情豊かなんだよなあ。

アニメを見るべきだと思う。アニメを見たらマンガは見なくてもいいんじゃないだろうか。マンガに忠実に作ってるから。

萌え系の作品として素晴らしいだけでなく、話もそこそこ面白いので広く勧めたい。

(最終更新日: 2018年12月30日 by ひっちぃ)

コメントする 画像をアップする 戻る

Copyright © manuke.com 2002-2018 All rights reserved.