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    小林至 (わしズム 創刊2号)

    最高(50点)
    2002年8月25日
    ひっちぃ

    アメリカに留学したことのある筆者が、アメリカの実態を鋭くえぐって描いた文章。どんなに晴れた日でもスラム以外では洗濯物を太陽ではなく乾燥機で乾かすアメリカ。人がめったにこない場所でも一年中空調をきかせるアメリカ。なぜこんな単純な事実が日本であまり知られていないのか不思議だ。

    筆者は東大出身のプロ野球選手だったことで有名らしい小林至。マンガ家で保守系言論人の一人の小林よしのりが作った雑誌「わしズム」の創刊号で書いた文章は、すべての記事の中で一番反響が大きかったらしいのだが、これはその続編。

    まずこのまえのワールドカップを批判し、アメリカではあまりにサッカーが人気ないだとか、アメリカは巨大な田舎なのだという話が続くが、そのあとの文章があまりに衝撃的なので流すことにする。

    アメリカ人は芝生にやたらとこだわるらしい。そもそもガーデン大国イギリスからの文化らしいのだが、気候にあわないなんてことは無視して、とにかく水を大量に使ってでも芝生を維持する。これをやめたら水道水の需要が四割減るとさえ言われているらしい。世界にポップカルチャーを輸出するアメリカが、ずっと昔に入ってきたよその文化にここまで影響されているというのがこっけいだ。金持ちのステータスだというから、日本の女性たちのブランド狂いといい勝負かもしれない。

    とにかくあきれる無駄遣いの数々。食べ物、レジ袋、ナプキン、白熱灯、ガソリン、電気。そして消費したあとは捨てまくる。その際たる例が、冒頭に書いた乾燥機と空調。

    この話は口コミで結構広まっているんじゃないだろうか。林真理子が週刊文春の連載で、出展元を書かずにとにかく聞いた話として乾燥機のことを書いている。多分小林至の文章を読んだ人から世間話として聞いたのだろう。

    前回の話もかなり強烈だった。金持ちと低所得者層との分離が年々激しくなるアメリカ。医療も教育も金次第。低所得者層を努力不足だとせせら笑う富裕者層の学生。そんな真実のアメリカを知らずに、美化された像だけしか知らない日本人。あまりにあっけらかんと書かれていたので、私もすぐには受け入れることができず、少しだけ裏を取ってみたり想像力を働かせたりした。小林至の言っていることはおおむね正しいのではないだろうか。

    この文章は、何かを分析したり考察したりする以前に、単純に事実を言っているだけなのだ。偏った観方をしていると思う人もいるかもしれないが、筆者が留学先のコロンビア大学で見た光景にウソはないだろうし、アメリカ中が必ずしもそうではないと言ってみたところで、筆者のいた場所では確実にそうだったのだ。

    これまでアメリカに留学した日本人は多数いたはずなのだが、なぜこのような負の面を言ってくれず、おしなべて良い面だけしか言ってこなかったのだろうか。確かに外国の悪い面を突っつくのはあまり趣味のいいことではないが、はっきりいってあまりにひどすぎはしないか。留学組と呼ばれる人々が非常にうさんくさく見えるようになった。もちろん素晴らしい学生生活を送った人も多かったのだろうが、彼らの視界の片隅には何も見えなかったのか、見て見ぬフリをしていたのだろう。

    しかしこれには日本の社会にも原因がありそうだ。というのは、日本は出る杭を打つ文化を持っており、そして留学するような人というのは、優秀であったり一風変わっていたり一度挫折した人であったりするので、出た杭なのだ。日本という国自体が、個性的な人間たちを日本嫌いにさせる力を持っている。そうした引力に引かれずに自分をたもち冷静に考えることのできる小林至という人間の強さがあってこそ、このような文章が書けたのだろう。

    この覚醒は、あらゆる物事を見る上での土台となるだろう。小林至の文章自体に高度な考察や鋭い視点があるわけではないが、私におよぼした影響は計り知れない。

    [参考]
    http://itaru.3hands.net/top.cgi

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