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    佐藤優 高永? (講談社+α新書)

    まあまあ(10点)
    2007年9月25日
    ひっちぃ

    ソビエト・ロシアの日本大使館に勤務したり外務省で調査や鈴木宗男のために働いたり、近頃はノンフィクション作家としても知られる佐藤優が、日本との関係を疑われて捕まったことのある韓国の情報機関勤務経験のある元軍人高永?と共著で、ロシアや北朝鮮がらみの日韓米の情報共有の現実とあるべき姿について語り合った対談本。

    以前、佐藤優「自壊する帝国」を読んで非常に面白かったので、同じ作者で電車の中でも読める新書の本書が目についたので手にとって見た。パラパラめくるうちに、今月死んだ瀬島龍三が韓国経済に多大な貢献をしていたという記述が目に留まったので、最初は買う気はなかったが衝動的に買ってしまった。

    字が大きくて内容が散漫で800円というのは割高だと思う。佐藤優の魅力も八割ぐらい。でも独特のあっさりした言葉の中に、外交の世界の凄みのある現実がところどころで語られていて迫力がある。一つ一つにあまり踏み込んでいないのが物足りないが、たぶん対談相手の高永?も情報の専門家なのでこの世界で当たり前のようなことをくどくどと語りたくなかったのだろう。それがこの本の構造的な欠陥だと思う。

    北朝鮮の外交の技術がかなり高度だということにはうなずける。瀬戸際戦略は自滅的に見えるが今に至るまで結果を見ればうまくいっているとしかいいようがない。欧州で最先端の外交を学んだエリートが北朝鮮にはいるらしい。

    北朝鮮はまたスパイ・工作活動も優れていることが知られているが、実は日本の陸軍中野学校の遺伝子をかなり引き継いでいるらしい。

    韓国もまた旧日本軍の遺伝子を引き継いでいるが、アメリカのやりかたを取り入れつつ、北朝鮮との戦いなど国家の存亡を掛けた活動により高いレベルの情報機関を持つに至り、KCIAという名は金大中の誘拐事件などでとどろいている。

    あとがきで高永?は日本が情報大国を目指すにあたりまず韓国の情報機関を見習った方がやりかたが近くて良いと言っている。ちょっとシャクだが確かにそのとおりだと思う。逆輸入だと考えればいい。

    外交官とは国際的に公認されたスパイなのだと実にあっさりと語っている。こういう情報の世界の常識やルールがポンポンと出てくるのがこの本の魅力である。しかし先に述べたように一つ一つに踏み込んでいないので物足りなく思う人も多いんじゃないかと思う。この手の本や情報誌を読んでいる人にとってはよく聞くような話も多い。

    高永?という人を持ってきたことについてはある程度の効果はあったと思うが、この人でなければダメというほどの魅力は感じなかった。まあでもそんなに特異でない一人の韓国人がここまで現実的に日本や北朝鮮などを見ていることが伝わってくることには大きな意味があるのかもしれない。

    (最終更新日: 2007年9月25日 by ひっちぃ)

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